羊の旅プロジェクト

現代アーティスト 原本真実によるアートプロジェクトです。


事の始まりは2021年、コロナ禍真っ只中。
様々な人に羊のオブジェをつくってもらい、それらを群れにして県内の"美しく善い"場所を旅する、という企画を思いついた。世は外出自粛が謳われており、自分の作った羊のオブジェがその人のアバターとなり、他の羊たちと一緒に旅をしていくことが、コロナ禍にあらたなコミュニティが生まれるきっかけや価値観のシェアにつながるのではないかと思った。


何故、羊なのか

古来より羊は人間とともに生活してきた。羊はふわふわの毛を人間に提供するかわりに、人間は羊たちを狼などの天敵から守るというパートナーシップを築いてきた。

"羊"という生き物があまりにも人間と身近な存在だったので、羊の文字や文化や宗教観にも影響は多くある。

例えば、漢字の中にも"羊"は紛れ込んでいる。美、善、群、鮮、などなど。羊が入っている漢字は、なんとなく、善い意味のものばかりな気がする。

私は、美しく善いものの象徴として、羊という生き物を定義することにした。


日本における羊

もともと、羊は日本には居なかった。日本にやってきたのは江戸時代後期ごろ。

羊がいない国の、羊を見たことがない日本人でさえも、羊の存在は知っていた。中国からやってきた"干支"の中には羊がいて、竜などの空想上の生き物と同様、日本人の意識の中に組み込まれていた。「白くてふわふわらしいぞ…」「なんとなく、かわいい生き物らしい」「なんとなく、善い生き物らしい」と、いうように。


羊のオブジェづくりのワークショップ

羊のオブジェの土台は剪定枝で骨組みをつくり、そこに羊毛をきりたんぽのように巻きつけている。様々な大きさの土台を用意し、参加者に選んでもらっている。その土台に好きな色の羊毛をチクチク刺し、ニードルフェルトの要領で"自分だけの羊"を作ってもらう。

羊毛は全て草木染めで染色しており、この羊のオブジェの材料は全て、自然由来のものだ。

羊のオブジェづくりのワークショップ

2021年、2022年はこの要領で羊の旅プロジェクトを行った。

2年間で羊のオブジェは120頭ほど誕生し、県内の様々な場所へ羊のオブジェを旅させた。旅の様子はインスタグラムで投稿し、何故かケーブルテレビでも紹介され、羊の旅プロジェクトはムーブメントになった。

羊の旅プロジェクトの様子
羊の群れ

2023年以降、コロナ禍は終わり、羊の旅プロジェクトのコンセプトも変化していく。


出逢いの予感をつくる試み

羊の旅プロジェクトの終焉は2030年と決めた。

このプロジェクトの参加者に羊のオブジェを作ってもらい、一旦それを家に持ち帰ってもらう。

毎年9月の満月の日に参加者の元に手紙が届く。その手紙には、この冬の"お題"が書いてある。

このお題に対する返信が2029年まで続いた人の元に、羊のオブジェを一堂に集めた群れが訪れるという予定だ。

ちなみに2023年のお題は「初雪の日に羊と一緒に写真を撮る」、
2024年は「羊と一緒に行きたいところに行ってみる」、
2025年は「冬の間に何かをやめてみる、やめてみてどうだったかを、冬の終わりごろに振り返ってみる」

2030年に自分の元に羊の群れがやってくるかもしれないという、嘘か本当かわからないような希望をつくる。

もしかしたら出逢うことができるかも、という予感を、私はアートプロジェクトとしてつくっている。

羊は美しく善いものの象徴だ。誰もが美しく善く生きるために、出逢いの予感は必要だと思う。


今後の予定

2026年4月から、くらし灯内で羊のオブジェづくりのワークショップを精力的に行う。
ワークショップの予定は随時お知らせするので、是非参加していただきたいです。

羊のオブジェづくりワークショップ